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アイのカタチ

 新しい小説を載せるかどうか悩みました。タッチはほぼ同じですが、
内容もテーマも今までの作と全然違います。かなりストレートな愛の
物語になっていると思います。短編連作になっております。
タイトルは「アイのカタチ」。全10作の予定ですが、すべて公開する
かも未定、7~8作くらいで中絶してしまうかも知れません。
 ご興味のある方は、あまり期待せずに、どうか肩の力を抜いて
お楽しみください。
 下記のリンクにまとめていきます。ご興味のある方はリンクをクリック
してください。

第一篇 「スイーツ系中年男子」
第一話
第二話
第三話
第四話

第二篇 「solitude」
第一話
第二話
第三話
第四話

第三篇 「悪戯」
第一話
第二話
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テーマ:自作小説
ジャンル:小説・文学

悪戯2

                2

 愚かな俺は、人生の泥濘(ぬかるみ)にはまりかけていた。
 人生の栄耀なんて、誰にも測れるものではないかもしれない。
 しかし、俺には自分の人生が、当初の設計から大きく外れて、歯車
が空転している音が聞こえていた。
 街で、電車で、会社で、学校で、道を大きく踏み外した人間の顔を
見たことがあるだろう。それは、人の倫(みち)といったたいそうな意
味でなく、自分の計画、将来設計から大きく外れた疲れ果てた塵芥(ち
りあくた)のような顔をした人間のことをさす。
 いったいどれだけそんな人間がいるかしれないが、その無数の人間
の中に俺はいた。街で見かけるそんな人間は、もしかしたら俺の分身
かもしれない。生き別れの兄弟かもしれない。そんな安心感にも似た
劣等感が、いつも俺を支配する。
 どこでこうなった。
 大学を出て一流企業に就職した。仕事をし、社会に貢献しているつ
もりだった。世にいう幸せな結婚をし、子どもをもうけ、幸せな家庭
にするつもりだった。完璧な父親になるつもりだった。
 酒飲みで、暴力をふるう親父への反発心もあったのかもしれない。
酔っては母親を殴り、俺と弟たちを痛罵し、恐怖を植えつけた。親父
はたいした稼ぎもなく、家は困窮を極めていた。市の調査員が来たこ
ともあった。その度に母親が申し訳なさそうな顔をして、お茶を出し
ながら何度も謝っているのを見た。親父の恐怖が、強烈に記憶に残っ
ている。俺たちは何も悪くなかったのに……。
 親父が手を出した女は数がしれない。当時は予想だにしなかったが、
今にして思う。手切れ金や堕胎手術費用に多額の借金が必要だったの
ではないか。俺はこんな親父にはならない。絶対に嫌だ。気づけば、
家出同然に家を出て、アルバイトをしながら苦学して一流大学に入っ
た。

 いつしか妻への愛も薄れ、何かと手がかかる子どもへの情愛がなく
なってきたとき、俺と早紀との出会いがあった。
 早紀は裏寂れたバーでカウンターに座って一人たたずんでいた。
 俺は感じた。同類の匂いを。
 奇妙だった。目の前の三十を過ぎたばかりに見える美しい女に、劣
等感にも似たあの感覚を嗅ぎとったのだった。俺は迷わず声をかけた。
探していた片割れを見つけた気分に、興奮していた。

「答えは見つかりましたか?」
まったく愚劣な質問に、相手は戸惑った表情をしていたが、
「ええ」
寂しげにこちらに少し微笑んだ。
 同じだ。この女は俺と同じだ。
 与えられた問題に、確実な正答を導きだしてきたのに、人から良い
と評価される答えをしてきたのに、道に迷ってしまった。奥深い森に
迷ってしまった。俺と同じ迷い子だ。
 俺はすぐさま会話を続けるか、このまま黙ってしまうか大いに考え
た。この女は俺と同じだ。ならば、見知らぬ人に愛想の良い返事をす
ることに疲れきって、こんな寂れたバーに迷い込んだに違いない。意
味のない会話を強要することは、彼女を余計に疲れさせるのではない
か。
 所在なく手をグーパーさせている俺を見て、早紀は笑いはじめた。

「ナンパは初めて?」
 初めて見る笑顔はスミレのようで、瞳に焼きついた。
「あんまり自信のあるギャグじゃなかったけど、受けてよかった」
 不慣れなことをごまかすために、冗談ということにしたが、見透か
したように彼女は言った。
「いいのよ。あなたに会って答えが見つかりそうだから」
 俺はその言葉で彼女の虜になってしまった。完全に掌で転がされて
いた。思えば、出会いのときから彼女に操られていたのかもしれない。
 それでもいい。俺は彼女に出会って答えを垣間見ることができたの
だから。そのときの俺は、何を血迷ったのか、自分を大きく見せよう
とこんなことを口走っていた。
「その答えってのはベッドの中?」
 クスクスと笑うと、彼女は、
「もっと形而上学的なもの。片割れを見つけた気分」
 謎めいた返答をした。アーモンド形の切れ長の目は、どこまでも涼
しげだった。

 俺たちはその夜、新宿のホテルで一夜を共にした。

テーマ:自作小説
ジャンル:小説・文学

悪戯1

               1

「なんで人間は愛し合うんだろうなぁ」
 俺は、傍らに横たわっている早紀に話しかけた。早紀はタヌキ寝入
りをしているのか、はたまた本当に寝ているのか、黙ったままだ。
「こんなものは愚者のすることじゃないのか。未来が見える人間には、
 相当愚かに映っているだろう」
「ねえ、それはセックスのことを言っているの?」
 不意に話しかけられて、少し驚いたが、俺はそのまま会話を続けた。
「ああ。一時の快感を得られたって、それはどこまでも永続する。
 無邪気な欲求だ。本能に従っているだけだ。預言者は俺の明日死ぬ
 かもしれない運命を知っていて、あざ笑っているかもしれないだろ
 う?」
 早紀は、少々不機嫌な様子で言葉を返した。
「確かに、私と壮平さんの関係はそうかもね」
 早紀はいらだった様子でベッドを出ると、黙って下着をつけはじめ
た。俺は彼女の手を掴んで、もう一度ベッドに誘い込もうとキスをし
た。
「ダメ。帰らないと。もうダメ」
「いいじゃないか」
「明日はダンナが出張から帰ってくるの。帰らなきゃ」
 ダンナという言葉を聞いて、急に冷めた。俺は早紀の手を放すと、
興味をなくしたように中空に視線に移し、煙草に火をつけた。早紀は、
ベッドの端に座りなおして、再び洋服を着はじめている。
「ねえ」
「何だよ」
「今度どこかに旅行でもいかない?」
「俺たちはそういうんじゃないだろ」
「そうだけど。でも、二人で行ってみたいの」
 早紀は鏡台の前で化粧を直しながら、鏡越しに俺に話しかける。
「どこへ行くんだ。ディズニーランドではしゃぐ歳でもないだろ」
「伊豆がいいわ。西伊豆。海がとても綺麗なの」
「へっ。老夫婦でもあるまいし」
 早紀は丹念にチークを塗る。口にくわえられた煙草の灰は次第に長
くなる。
「今度ダンナが海外出張なの。その間に行きましょ。旅行の間は好き
 にしていいわ」
 その言葉にむらむらと劣情が燃え上がってきたが、旅行という非日
常に多少の気だるさも同時に感じていた。
 人はなぜ旅行に行こうと思うのだろう。日常という牢獄から非日常
へエスケープすることに大きな意味があるのだろうか。非日常から日
常に戻ることは、仮釈放から牢獄に戻ることに似た倦怠感があるとい
うのに。
 早紀は俺の空想とは裏腹に、小娘のような高揚感で、俺の返事に期
待する視線をよこす。
「いつから。いつから出張なんだ」
「4月の上旬。4日からだったかしら」
 金曜日か。仕事の都合をつければ、金、土、日と三日間は自由にで
きるかもしれない。早紀は俺の手を握りながら、思案顔の俺を見つめ
ている。
 煙草の火は燃え尽きようとして、フィルターにまでさしかかってき
ていた。異常な焦げ臭さが、ラブホテルの一室に充満していた。紫煙
が彼女の顔を隠す。
 俺たちの愛も燃え尽きようとしているのかもしれなかった。こんな
関係になってから丸四年。長年連れ添ってきた夫婦のように、意思の
疎通もできていると感じていた。が、こんな形の要求をされたのは、
初めてのことだ。俺は早紀の心を見失い始めている。
「いいよ。行こう」
 長考の末の俺の答えに、早紀は満足したようににっこりとほほ笑ん
だ。
「帰る。またLINEするわ」
 彼女は手の甲を一なですると、バッグを持って、部屋を出て行った。
残された俺は、大きな枕に顔をうずめて、眠った。

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ジャンル:小説・文学

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imikowa88

Author:imikowa88
自作小説みたいなものを
不定期更新します。

保管庫みたいなものなので
あたたかい目で見守ってください。

作者解説を読みたい場合は、
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