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短期連載小説3 ~ 推理

連載3回目

短編くらいのボリュームになったので、連載回数が増えてしまいました。
なんとか4回でまとめたいところですが、5回に突入する勢いです。

本編を読みたい方は↓の[read more!]をクリックしてください。
   ―― 3 ――



ゲームだと、ゲーム……。

人の人生をかけた大勝負をゲーム扱いするのか?

あるいは、このまま逮捕され、一生を刑務所で過ごすことになるかもしれないのに。

こいつは遊び半分で話しているのか?



彼はふと憐憫(れんびん)の表情をして、

「ゲームです。事件はもう起こってしまったのです。過去の出来事は、過去として

 処理するしかないのです。異論がありますか?

 遊びです。ゲームです。怠惰で腐れた貴方の人生に一輪の花をそえてあげようと
 
 私は努力しているのですよ」

そういうと、肩をすくめ、大きなため息をついた。


こいつに何を反論しても無駄だろう。このピエロの人形じみた格好をしたこいつには、

人間らしい感情などないのだろう。もっとも人殺しの俺にも人間らしい感情があるとは

思えないが。俺は自嘲(じちょう)の笑いをもらした。


「自分を卑下することはありませんよ。貴方はあまりにも短絡的で、愚かで、自制心が

 欠損しているため、悪い人間にだまされたのです。おかしいですか?」


俺の笑いを見て、エニちゃんは不思議そうな表情をした。俺の自責の笑いを、可笑しくて

笑っていると勘違いしているのだ。


「お前さんは、たいそう賢くて、偉いんだな。そうして心がない。俺たちのような

 ウジ虫のド底辺の人間をいたぶって楽しんでいるんだ」

「心がない?確かにそうかもしれませんね……」


彼は、長めの髪をかき上げると、小さめに呟いた。よく見ると、つやつやとした

女のような髪をしている。


「確かに私には他人の感情がよく分からない。そのことと事件の解明とは

 まったくの無関連です。さ、続けましょう」


まったく意に介さない様子で、エニちゃんは左手を広げて顔の近くまで挙げた。


「幽霊説、夢説、本人逃亡説。これらは私の論証によってすべて否定されました。

 さて、これらがすべて否定されるとなると、他人が死体を持ち運んだというのが

 一番しっくりくる解答ということになります。

 不思議ですね。貴方はこの最も簡単な解答を真っ先に否定しました。何故でしょう」

「そんなのは簡単だ。俺の来る前は、客がきた形跡がなかった。Aが1人でこの

 部屋にいたんだ」

「Aさんが1人でこの部屋にいたからといって、他人がこの部屋にいなかった証明に

 なりますか」


俺の頭に大きな疑問符が浮かび上がった。


……こいつは何を言っているんだ?


Aが1人でこの部屋にいたなら、他人がいるはずがないだろう。


「仮にAを殺したいほど憎んでいる、もしくは殺したいほど邪魔に思っている人間が

 この部屋にいたとしたらどうでしょう」

「いなかったといっているだろう」


ハー、と特大のため息をつくと、エニちゃんは再び質問した。


「この部屋に貴方とAさん以外の人間がいたとしたらどうでしょう」

「……だから」

「いたのです。現に私がここにいるでしょう」

「お前が…」

「もちろん、死体を運び出したのは私ではありません。このことは断言できます。

 私と貴方とAさん以外の人間がこの部屋にいたのです。

 服を着替えるときに気づきませんでしたか?」


俺の言葉を次々に遮って、彼は断言した。

服を着替えるときだと?

順を追って思い出そうとした。

俺はAの服を取り出し、下着をつけ、トレーナーを身につけ……


「クローゼットの中はよく確認しましたか?」


そういえば、クローゼットのうずたかく積まれた衣服の中に少し

隙間があったような。


「彼は……仮に殺人者と名付けましょう。殺人者は機会を覗って、今か今かと

 殺人の瞬間を待ちうけていたのです。クローゼットの中で息をひそめて。

 そして、貴方がやってきた。殺人者の全身の血が沸騰したでしょう。

 息を殺すのに精いっぱいだったはずだ。

 貴方が無謀にも殺人現場を放置して、シャワーを浴びはじめた途端、興奮で

 叫びだしたいところだったでしょう。暢気(のんき)です。貴方は暢気すぎます」

「知っている。俺が愚かなことは。知っている。だから、そんなに責めないでくれ」


俺は頭を抱えて、しゃがみ込み、懇願した。耳をふさぎたい気分だ。


「ええ。貴方は愚かです。そして、それだけ純真無垢です。だから他人の甘言に

 騙されるのです。そして、まんまと代理殺人を犯した。まあ、それはこの際

 いいでしょう」


一つ深呼吸すると、彼は続けた。


「殺人者は、貴方がシャワーを浴びているところに、死体の処理をすることにした。

 なんとも大胆なことです。貴方が5分で風呂場から出てきてしまえば、自分の

 計画が露呈してしまうのですからね。

 しかし、彼には自信があった。貴方がシャワーをなかなか終えないことを知って

 いた。何故なら、彼の計画には貴方の行動や傾向もすべて含まれていたのですから。
 


 殺人者は準備万端整えて、死体を運び出すことにした。死体を運搬するには

 人の目が気になる。そのまま運び出すような愚かなことはしない。あらかじめ

 用意してあった、プラスティックシートなどで死体を包み、綺麗にパッキングした

 のち、段ボールの箱に入れたのです。引っ越し用の大きな段ボールに。

 この辺りは、人形などを使って練習すれば、時間をかけずにに包めるように

 なります。何しろ犯人はこの手法のプロです。私にも経験があります」


ニヤニヤと不気味な笑いを浮かべると、エニちゃんは言い放った。


「殺人者の計画で、最も肝心で所要時間がかかるところは、血の処理です。

 この部屋から血をなくさないと、この計画は成立しません。

 どうやって処理しようか。彼は頭を悩ませることもなく、これを使ったのです」


そういうと、彼は右手を頭上に掲げた。左手は矢印の形を作って、右手の方を

指している。

彼の右手には、赤黒い液体が入った試験官が握られていた。血だ。

さっと右手を下ろすと、床にぶちまけた。跳ね返りが俺のところまで飛んできた。

汚ねえな、文句を言ってやろうとしたが、エニちゃんの右手にはまた違うものが

あった。白い粉のようなものが袋に入っている。袋を破き、白い粉をサーッと

床にまき始める。白い粉はじわじわと鮮血に染まり、固まりはじめた。


「どうです。この粉は、血液の凝固成分……フィブリノーゲンと化学反応を起こし、

 糊化現象を誘発します。糊化した血液は、液体成分と固体成分に分離して……

 まあ、理屈はどうでも良いです。これを見なさい」


彼は命じると、血液の塊に手を伸ばした。彼の手に握られた固体は、加熱された

モチのように柔らかく、プルプルとスライム状になっていた。

赤く染まったそれは、床に少し残った透明の液体とは、明らかに分離していた。

これは……。

「この魔法の粉を使えば、血液をあっという間に固体状に変えることができ、

 あとは、血しょうをふき取るだけで、あっという間に掃除完了です。

 もはや、ただの20分で死体を運び出すことを完了することができるのです。
 

 ここで一つの疑問が浮かび上がりますね?警察が本気で鑑定すれば、拭き残しの

 血痕があったり、今のようにルミノール反応を容易に発見することができます。

 死体がないところには、殺人現場がない。警察は死体や血痕がない殺人事件を

 本気で捜査することはありません。捜査がないということは、貴方の利益になりは

 すれ、不利益なことはないと考えられます。

 こんなことをしても無駄じゃないかと。現場をこのままにした方が、彼にとって

 多大な利益があるんじゃないかと」

「確かにそうだ。そのまま放っておけば、失踪したAがここで殺されたことを

 警察は発見する。犯人が誰だか探し始める」

「そうです。少なくとも、危険を冒してまで、死体を動かすメリットはないように

 感じられます。短絡的な思考では……


 私にとっては、この犯人の動機がとても難しいところでした」
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テーマ:ミステリ
ジャンル:小説・文学

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