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長期連載小説7 ~ 三須刑事3

          ж  ж  ж  ж


「お前がやったんやろ?Hを殺して、ふざけた作文を書いたんはお前や。違うか?」

 田中はかなり威圧的に繰り出した。その口調には断定の兆しも見られる。目の前に

座っている少年は首を振って否定した。

「ふざけんな。僕はやってない。誰が言ったんや。そないなこと」

「やったんやろ?お前の顔に書いてあるわ」

 少年はびくっと顔を引きつらせた。強ばる表情には、ありありと恐怖が浮かび

上がっていた。田中の不敵な笑みから視線をそらし、そっぽを向いた。

「僕と違う。僕は知らん」

「お前が知らんいうてもな、ちゃーんと見た人がおるんやで。ほれ、お前の友人の

 岡くんもそうや言うとる」

「岡が……。なんでそんなん言うねん」

 バン、と机を蹴飛ばすと上にあったデスクランプが揺れた。

「ほらな。お前の粗暴性はこっちでも調べ済みやで」

 挑発的にささやくと、田中はふんぞり返るようにパイプ椅子に座りなおした。

「僕と違う。確かに、岡とはケンカしてたけど。やけど、そやけど、僕はやってない」

「証拠があってもか?」

 少年は目を見開き、心底驚いたようだ。その表情には、演技ではない、真に迫った

驚愕があった。

「証拠……?」

「お前がやったいう証拠や」

「そんなもんあれへん!僕がやってへん言うのが証拠や!」

 田中は傍らの若い刑事に目配せをすると、若い刑事はさも大事そうに封筒から書類

の束を取り出した。貴重な宝が隠されているかのように、慎重な手つきだ。その右手

は少し震えている。

 少年はその様子を見逃すまいと、ずっと視線を追わせていた。視線を遮るように

田中が腕を出して、書類の束を指した。

「これが証拠や。ここにはお前の作文の筆跡と犯行声明の筆跡とが一致した、書いて

 あるんや。ほれ見てみい。ほれここじゃ」

 若い刑事がパラパラとめくって見せるのを、田中は指で示した。が、少年の目には

字面を追うのがやっとで、頭で理解するのは不可能だった。そもそもこの少年は、

漢字が苦手だった。

「あんなふざけた文、書きくさって。わしらも頭きとんのや。警察なめとると

 ブタ箱行くいうのんもわかる年頃やろ」

 田中はギラリとした目を少年に投げつける。怒りが沸々と湧き上がるのか、額に

青筋を立てている。

「ホンマに……、ホンマに僕の筆跡と一致したの」

 少年は、おどおどと視線を泳がす。

「愚鈍な警察諸君とはよく言ったものや。こうやって捕まってる方がよっぽど愚鈍

 やな」

 田中はカンカンカンとペン尻を机に叩きつける。まだ任意出頭の段階だが、田中の

態度は、この少年を犯人だと決めつけている。少年もまた、事情を聞かれるだけだと

思っていたためか、自分が犯人だと言われて焦りを隠せないようでいる。

「なあ、認めようか。認めればお前の安全は保証したる」

「安全?どういうことですか?僕は危険なんか?」

「まあ、日本中が騒いどる事件の犯人が釈放されたなったとするわな。お前の家には

 ぎょうさん脅迫状が届くはずや。人殺しってな。家族や弟たちも総スカンやで。通り

 歩けば、石が飛んでくる、卵が飛んでくる。突然ブン殴られるかもしれん。

 今認めてしまえば、お前は年少(少年院)の中でゆったり悠々自適の生活や。しかも

 少年事件だからマスコミはお前を実名報道でけん。ほいで年少から出たら、晴れて

 自由の身ぃや。家族も守られるで。

 どっちがええねん」

 少年はじっくりと考えるように下を向き、両手を握った。まだ年端もいかず、思考

能力が発達していない少年のことだ。老獪な刑事の誘導尋問に引っかかるのも時間の

問題だった。

「僕が認めれば、家族に迷惑かからん?」

「そういうこっちゃ」

「ホンマに筆跡が一致したん?」

「しつこいの。そういう鑑定結果やて」
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ジャンル:小説・文学

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