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長期連載小説22 ~ 事件の行方2

「まぁ信じへんでもええ。お前が追ってた事件な、家裁に送致されるで」
「何やて?」
 藤田は目を皿のようにして驚いた。見つめる先には、鈴木の冷めきった視線があっ
た。
「神戸の殺人・死体遺棄事件や。家裁に送致されるで」
「ホンマか……」
「ホンマや。明日のトップや」
 終わった。藤田の神戸事件は終わった。家裁に送致されるということは、ほぼ物的
証拠がそろい、犯人が確定したということだろう。
「証拠はそろったんか。ホンマか……」
 鈴木は右手の人差指でポリポリ頬をかくと、視線をそらした。
「知らん。そろってへんちゃうのか。お前、ずいぶん熱心に追ってたやないか」
「そやけど。物的証拠に乏しいっちゅう情報しかあれへん」
 藤田は身をよじって、体を起こそうとした。多少の痛みはかまわなかった。思うよ
うに左半身が動かない。鈴木はそんな藤田をゆっくりと押し返した。
「黙って寝てろ」
 そうして空を見つめると、答えを探すように慎重に言葉をすすめた。
「そやなぁ。あまり確かな筋ちゃうけどええか?」
 藤田はゆっくりと肯いて続きを促した。鈴木は藤田の耳元に顔を近づけると、ささ
やくような声で続けた。
「どうやら警察の裏で何かが動いたらしいで」
「何かってなんや」
 真剣な顔をした鈴木に、藤田もささやき声で応じた。
「かなりでかい存在や。それ以上は知らん」
「何ででかい存在が動いてるんや」
「真犯人をかくまうためやないか」
「かなりヤバいやつやったいうことか」
「そやろな。多少荒っぽくても犯人特定を大々的に発表したんは……」
 後はわかるやろ、と鈴木は目線で語った。
「証拠がなくとも、自白が得られれば、事件は確定するってか。少年事件やで。そん
 な乱暴な……」
「少年やから、まかり通る思とるんやろな。通り魔の方は、認めとるんやろ。ほんな
 ら、ついでにこいつに罪をかぶせてまえ、っちゅうことやろな」
「アホか!」
「俺にキレたってしゃあないで。まあ、確かな情報ちゃうし、残りは俺の想像や。ホ
 ンマはそんなことなかったかもしれん」
「あったかもしれんのやろっ。兵庫新聞は何しとんや!」
 鈴木はニヤリと笑うと、つっこんだ。
「あそこにはとっくに真実がないやろ」
「せやけどお前」
「今のは部内でも言うな。本格的に首が飛ぶ」
「真実を伝えるのが新聞やないのか」
「わかるやろ。兵庫新聞はじめ、各新聞にもコナがかかっとるんや」
 鈴木はそれだけ言うと、話を途中で切り上げた。

 藤田は、鈴木が置いていった書籍に目を通しながら、事件のことを思い返していた。
 ――あれはいったい何やったんや。初めから終わりまで、煙に巻かれたように謎が
取り巻く事件やった。犯人と称された人間もすっかり話題に上らなくなった。もはや
これで手打ちなんか。
 藤田は悔しさを噛みしめながら、ベッドで懊悩した。書籍のハードカヴァーがきし
きしと音を立てた。クソっと吐息をもらすと、本を床に投げつけた。藤田は握りこぶ
しを作ると、自分の無力さに歯噛みした。

 ――絶対に暴いてやる。時が経っても……
 大きな壁に向かって、藤田はゆっくりと一歩を踏み出した。
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テーマ:ミステリ
ジャンル:小説・文学

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