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存在意義

 俺は雑踏の中立ち止まった。人々は立ち止る俺のことなど、興味がないようにそれ
ぞれの歩みを止めなかった。急に立ち止まった俺を、中年の女性が迷惑そうに振りか
えってじろじろとぶしつけな視線をよこした。俺はそんな彼女を無視して、大空を仰
いだ。大都会の灰色のビル群は、ちっぽけな俺を見下ろして、小さな、非常にか細い
声で囁いた。

 お前は何のためにいるんだ?

 雑踏はそんな囁きに気づかず、駅の方に向かってぞろぞろと歩いていく。俺は、は
たと考え込んだ。俺はいったい何のためにここにいるんだ。ここは俺のいるべき場所
か?背中に冷たい汗がつーっと流れた。紺色のスーツの中のワイシャツはびしょ濡れ
だった。眼鏡の前の視界が歪んだ。

 いつか訪れる死を待ち、わずかな富を得て、貧しい自己満足の中で生命活動という
無意味な行為を行って、誰にも理解されない些細な、ほんの些細な小さな人生をまっ
とうするのか?お前が生きた結果、人々に、世界に、何の影響をもたらすのだ?この
コンクリートジャングルの一片でも動かすことができるのか?

 ビル群の囁きは、次第に大きくなり、大音量で耳に響いた。俺は居たたまれなくな
り、大空から顔をそむけて歩き出した。街いく人々が俺を振り返り、大なり小なり口
を動かして俺に言った。

 お前はどうしてここにいる?

 俺は走り出した。どこでもいい。ここではないどこかへ逃げたかった。慌ててスイ
カを自動改札機に押し付けると、人々を押しのけ、階段を駆け降りた。電車がやって
くる。俺は安堵のため息を漏らすと、ホームに入る電車を待ちながら、ネクタイを緩
めた。暑いなぁ、今日は。

 お前はどうしてここにいる?

 声が聞こえると同時に、ドンっと背中を押され、俺は線路に転がり落ちた。プアー
ンと悲しい汽笛がホームに鳴り響いた。


(解説)
 存在意義に押しつぶされ、殺される男の話。私は子どものころから
自らの存在意義を考えてきました。僕はなぜここにいるんだろう?
望まれない子どもなんだろうか?一人泣き、怖い夢に脅えさせられた
こともよくありました。
 人々ざわめきの中にいるとき、フワフワとした自分の存在が、誰かに
見つめられ、話しかけられることによって、やっと「ここにいる」と
いうことが自覚させられ、私は小さな生命を維持しているような気さ
えします。
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テーマ:ミステリ
ジャンル:小説・文学

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